日常の背後に・・・3.11を経験して・・・

 壁紙を剥がすとそこに

無表情な壁が広がっているように

日常を剥がすとそこに

不条理な世界が広がっている

われらが日々経験する

正義や感動等の彩られた風景

それらは投影された幻のような

ものにすぎないのか

 

 三月十一日

僕らは、不条理が津波となって

押し寄せてくるのを見た。

あらゆる価値を飲みこんでゆく

虚無 の波動

それは数十年に亘るオームの逃亡犯に

出頭を促すほどの衝撃でもあった。

 

 あの日僕らは

怒れる神の啓示を観たのかもしれないし、

死者達のメッセージを聞いたのかもしれない

我々は、あまりに見えるものの 世界を信じ過ぎた

 あの時以来

不条理を塗りつぶすべき

幾多の言葉やスローガンが

叫ばれたが

その言葉の隙間から

絶えず不条理の表情が覘いてくる

 僕らはもう過去の世界には戻れない

その壁を突き抜けるものはなにか

不条理を突き破るものはなにか

・・・・・・・・・・

 それは死者達の眼差

滅びることのない頂きからの言葉

薄明の彼方から眼差しこそが

不条理を消し去ってゆく

・・・・・・・・

  そうだ

僕等の祖先達が

絶えず心に抱き続け

幾百年も耐え続けた視線こそが

今の僕等に必要なものだ

 僕等は、あまりに白日に慣れ過ぎた

彩の世界に慣れ過ぎた

 僕はこれから

薄明の世界に身を置こうと思う

不条理を乗り越えるために

不条理を乗り越えるために