書棚にあった一冊の本
紙の箱に収まった
立派な製本の本
55年振りに目を通した
本の名は
サイバネティツクス
ノーバート・ウイナー著
1948年出版の書
手にしたのは、
その第二版の翻訳本
1973年の発行
人工知能について
考えていて
思い出し、取り出したものだ
何故こんな本が手元にありうるのか
すっかり忘れていた
それが数日たって思い出された
大学を卒業して5年
理学から工学へ
工学から建設現場へ
環境が激変する中で、
僕は、自分の現在と
自分の原点を結ぶものを
必死に探しもとめていた
この本は、その頃の
自分の形見なのだ
理学、物理学と現場を
繋ぐ手がかりを必死
もとめていた自分の姿なのだ
科学と工学繋ぐものがそこにある
僕の直観は間違っていなかった
だだ、工学の知識の乏しかった
当時の私には
難しかった
その本は序文だけ読んで
捨て置かれていた
壁と格闘し敗れた
記録でもある
あの頃の自分が
いとおしく思えた
タイムマシンに乗って
助けてやりたいと思った