学友達の思い出には、幾多の謎がある、光があり、影がある
還暦を契機に回数を重ねてきた大学の同窓会
回数を重ねるごとにあの時代の輪郭が、姿を見せてくる
その時代は、薄明の中に浮かび上がってくる丘の上の
城壁に囲まれた中世都市のようでもあり
あるいは、砂漠の小高い丘に半ば埋もれた
古代都市の廃墟のようにも思える
しかし、じっと眼を凝らしてみれば
その都市は、迷路に満ち満ちており
明け方から夕方そして深夜に至るまでの
すべて風景が折り重なって
時間の中に凝縮されている
一つの宇宙コロニーのようにも思える
あの頃
僕らはやたらと自分の足跡だけを見つめながら
その都市の中を徘徊していた
あの都市で、僕等は、何人の仲間と出会ったのだろうか
多くの仲間達と出会ったようにも思えるし
異次元の幻影を見ただけのようにも思える
見知らぬ西洋の黒ずんだ街角を
幾つも曲がった先に
突如として見えた湖の湖面に
一瞬輝いた光の反射に
僕は進路を見失ってしまった
そのように、多くの仲間達が
迷路のような街の一角で
思わず立ち止まってしまったということだ
だが、その先が異なっていた
あるものは、尖塔の頂きに
天使が降臨するのを目撃したし、
あるものは、大空に巨大な風船をみた
あるものは、おびただしい群衆と共に
赤い旗をなびかせて街の先の砂漠に行進して
行き方知れずになってしまった
自らが、黒いマントを纏い、
軍勢の如く駆け抜けて行った者達もいた
路上に枯葉の舞う年の暮れ
一文無しの僕は、目的もなく街を歩き続けていた
それは僕の儀式のようなもので
その時、自分が何をしたいのか
さっぱり分らなくなっていた
しかし眼差しの方向は、皆異なっていて、
あるものは、町の尖塔の先を見つめていたし
あるいは街の外部へ至りそうな
微かな明かりを目指した
香に魅かれたもの、
風に魅かれたもの、
音に魅かれたもの、
やがて、各自が思いをさだめ始めた頃
時が引き潮のように消え去り
青春都市は、崩壊した
今、僕はその幻を遠望して砂漠の上、満天の星の下にいる